徳永京子(演劇ジャーナリスト)の覚え書きなど。Twitterもやってます。アカウントはk_tokunaga
by word-robe89
プロフィールを見る
画像一覧
カテゴリ
全体
雑感
劇評
お知らせ
演劇諸々
以前の記事
2012年 06月
2012年 01月
2011年 10月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 01月
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
5月に観た芝居の感想
at 2012-06-06 13:57
2011年の演劇アンケートに..
at 2012-01-05 21:33
2011年9月に観た芝居数本..
at 2011-10-27 18:32
7月に観た芝居いくつか
at 2011-07-17 12:34
2011年6月24日
at 2011-06-24 05:16
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
演劇
画像一覧

7月に観た芝居いくつか

サンプル『ゲヘナにて』三鷹芸術文化センター

大きなスロットマシンをイメージした。
複数の事象が並列で、それぞれに、バラバラのリズムで、運動している。微妙に影響し合いながらも、絵だの数字だのが揃うことは決してないスロットマシン。揃わないからこそ終わるこのとない、永久の運動体。
でも松井さんが描きたかったのはスロットマシンではなく、そうした自由で豊かな運動体さえほんの一部である、とてつもなく大きなものだったのではないかと思う。タイトルになぞらえていえば、それはゲヘナ(地獄)だし、天国にだって置き換え可能だ。
大き過ぎて私達の視界には入りきらないものの存在を、チープな小道具、イミテーション感に満ちたメタファー、何かの“途中”であることを感じさせる状態と場所、それらをつなげていくユーモアで感じさせたのは、さすが松井さん、さすがサンプル。
ただ、1回だけでいいからスロットの目が揃う瞬間を見せてもらえたら、観劇体験としてのカタルシスは比べようもなく大きく違っただろうな、とも夢想する。


『幽霊たち』パルコ劇場

奥田瑛二が抜群。舞台俳優として、あんなに秀でているんだと驚いた。出番のほとんどが、ただ座って本を読んでいるだけなのに、空間的にも時間的に物語“もつ”のだ。
小説よりも舞台のほうが、ミスター・ホワイトとミスター・ブラックが同一人物であることが早々にわかってしまうのだけれど、それでも興ざめさせないし、なぜ彼が探偵に自分を延々と観察させるのかという大きな謎に対する答えが、奥田の体の中に存在している。白井晃のオースター作品の今後のキーパーソンは、彼かもしれない。
そしてオースター作品特有の絵画的な時間感覚は、小野寺修二の振付ととても相性がいい。これも大きな収穫。


『おもいのまま』あうるすぽっと

たしか最初の企画の段階で、脚本のクレジットはなかったと記憶する。にわかにそれが加わった印象があって、よくない予感を感じていたのだが、残念なことにそれが当たった。
水難事故で子供を亡くした夫婦、しかも数年間も死体が見つからなかった、というデリケートな大前提が、夫婦の現在にまったく反映されていない。正義のスクープを取るために殺人さえも犯そうとするジャーナリストの心情の描き方も、あまりにも杜撰だ。
いや、それらは枝葉の部分であって、現実は選択の仕方でいくらでも変わっていくという問題がテーマなのだろう。だとしても、そのテーマはすでにさまざまな作品で繰り返し採り上げられているわけで、あえてそれをやった成果を感じ取れなかった。
言葉にならない不吉な予感、人に選択を促す無意識、忘れたつもりになっている死んだ子への呼びかけなど、演出の飴屋法水が忍び込ませた音の仕掛けも、私には効果的だとは思えなかった。


『牡丹灯籠』ハイリンド

あんなに超満員の日暮里d-倉庫は初めて。
でも、クチコミで当日券の観客がどんどん増えたのがわかる完成度の高さ。演出の西沢栄治は、入り組んだ人間関係が同時進行で進んでいくストーリーを、何段階かで高さを変えた舞台で手際よく見せていく。俳優達も達者。客演も健闘していたが、やはりハイリンドの俳優が要所を締める。
ひとつだけ残念だったのは、原作が落語であることに敬意を表してだろう、すべての小道具を手ぬぐいと扇子で演じていたのに、槍だけ、杖(じょう。私は西沢さんに「棒」と言ってしまって無知をさらした)を使ったこと。レベルの高い要求であることはわかるのだが、俳優が上手いだけに、もしかしたら扇子か手ぬぐいでも迫力を出せたかもしれない、と思った。


『血の婚礼』大規模修繕劇団

具象の勝利。90分、ほぼノンストップで7トンの雨を降らす。その負荷が俳優の切実さと色気につながっているのも確かだけれど、その雨と暗闇、そしてスピーカーから朗読される詩で、にしすがも創造舎が本当に森の湿度を獲得し、登場人物が血を求める理由を観客の皮膚に届けた。丸山智巳、近藤公園が◎。窪塚洋介も大健闘だったけど、蜷川が稽古前にインタビューで「この作品で窪塚君にユーモアをプレゼントしたい」と話していた目標値までは届かず。次作に期待。
[PR]
by word-robe89 | 2011-07-17 12:34 | 劇評